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減感作療法(皮下免疫療法)

減感作療法は皮下免疫療法とも呼ばれ、抗原特異的免疫療法の一つの治療法です。
歴史は古く、1911年Noonという人がイネ科花粉症の治療方法として報告したのが始まりです。
現在一般的に行われている薬物治療の始まりはそれより遅く、現在、アレルギーに対する薬物療法として使われている抗ヒスタミン薬は、1942年に販売されました。

減感作療法の発展

減感作療法が日本で採り入れられたのは1960年代で、1963年からスギやダニなどのアレルゲンエキスが市販され、皮下注射による特異的免疫療法として開始されました。

減感作療法は、アレルギーの原因となる物質の注射用エキスをわずかな量から開始し徐々に量を増加させながら皮下注射する治療法で、体を徐々に慣れさせて過剰な免疫反応を弱めて症状を起こりにくくするものです。

薬物療法が対処療法であるのに対し、減感作療法は体質改善し根本的に治そうとする治療法です。
例えば、ダニがアレルゲンの場合には、ダニの成分を含んだ注射用エキスをごく少量から注射し、徐々に量を増やします。

減感作療法の方法

医師の管理下の元、注射部位の皮膚反応径(赤い腫れの直径)が3cm以上になる場合は次回の増量は行なわず、同量の注射量で反応径が小さくなった場合に次回は増量します。

治療開始してから2~6ヶ月の期間をかけて週に1~2回のペースで、徐々に増量して注射を行い、一定の注射回数で副作用なく増量した最終量を維持量とします。

維持量に到達後は2週に1回の注射を数回繰り返し、その後4週に1回の注射を3年以上行います。

維持注射の間隔は、皮膚反応が軽減すれば6~8週に1回とする場合もあります。

早い方では開始から2ヵ月ぐらいで治療効果が現れはじめ、これを2年以上続けることで効果が高まるとともに効果が持続するようになります。

この減感作療法の治療効果は、70~80%以上の患者さんで自覚症状が改善し、抗アレルギー薬などの薬を減量ないし中止できます。また薬物治療よりも優れた効果があることも確認されています。
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減感作療法のデメリット

しかし、その一方で、減感作療法には次のようなデメリットもあります。
1.長期間にわたり通院しなければならず、注射後の副作用の有無を確認する必要があるので、1回の診療時間も長くなる。(少なくとも2年以上40回以上の通院が必要)
2.毎回皮下注射を行うため痛みや腫れをともなう。(ごくまれに注射部位の色素沈着がみられます)
3.頻度は少ないがアナフィラキシーショックや喘息発作等の重篤な副作用が起こる可能性がある。
また、薬剤の研究開発も進み、1980年代に副作用が少ない第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイド薬が市販され、簡便で即効性があったことで広く普及したこともあって、残念ながら減感作療法はあまり普及せず、実施する医療機関も年々減少してきているのが現状です。

しかし、特異的免疫療法は対処療法ではなく根治も望めることから、皮下注射という減感作療法の短所を改善する方法の研究も行われ続けました。
アレルギー物質エキスの鼻腔内投与や内服など投与経路を変えた様々な方法が試された結果、舌下の粘膜から薬を吸収させる「舌下免疫療法」が生まれました。

舌下免疫療法の有効性

舌下免疫療法の歴史

舌下免疫療法は、1990年代にイタリアで注射用エキスの経口投与で効果が得られたのが最初です。

その後、他のヨーロッパ諸国やアメリカなどで、カモガヤ・ブタクサなどの花粉症やハウスダスト(ダニ)などに対しても成人だけでなく小児に対しても有効であるとの報告がなされました。

日本では、2003年ころから舌下の投与による治療法が試みられるようになりました。

保険適用の舌下免疫療法

2010年秋から罹患率の高いスギ花粉症に対する舌下免疫療法の臨床試験が行われ、その有効性が確認されるとともに、副作用も減感作療法よりも少ないことが分かってきました。

保険適応となったのは、スギは2014年10月から、ダニは2016年12月からです。

舌下免疫療法の方法

治療は減感作療法と同じく、初回は少量から始めて増量し、少なくとも2~3年かけてゆっくり体質の改善を図ります。
通常、1日1回舌下投与します。
投与の際には舌下で完全に崩壊するまで保ち、崩壊したら唾液で飲み込みます(投与後5分間はうがいや飲食を控えます)。

初回の投与は医療機関で実施し30分間は副作用がないかを確認をしますが、強い副作用が見られなければその後は毎日自宅でほぼ一定の時間に1回投与し、2週間に1回、慣れてくれば1ヶ月に1回受診をするだけで治療が継続できます。

舌下免疫療法の治療効果

2年以上の投与70%前後の患者さんに改善効果が見られます。
ダニエキスを1年間使用した調査では、投与前に比べ症状の程度が約半分程度の改善が認められた患者さんがほとんどでした。

比較のために行ったプラセボ(薬効のない偽薬)投与では症状の20%程度の改善にとどまっていますから、1年間継続しただけでも有効性は確認されているのです。

舌下免疫療法のメリット

また、そのメリットとして次のような点も挙げることができます。
1.経口投与なので自宅で治療でき、毎週通院する必要がない。
2.注射の痛みがない。
3.アナフィラキシーなどの全身性の重篤な副作用が皮下注射による減感作療法よりも少ない。
ただし、舌下免疫療法は自宅での治療が主体となるため、患者さん自身が免疫療法の意義と実際の使用法を十分に理解する必要があります。
そこで、5歳未満のお子さんは治療適応となっていません。
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